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北アルプストレイルプログラム 登山道ブログを始めます!

本ページをご覧いただきありがとうございます。北アルプス富山県側登山道等維持連絡協議会で事務局を務める環境省立山管理官事務所の中森と申します。

この登山道ブログは、北アルプストレイルプログラムの取組として、富山県側の登山道維持に関連する取組について、各地での取組状況や実施状況、検討内容等に関する情報発信媒体として活用する予定です。

ページを見てくださっている方の多くは登山をされる方だと思いますが、北アルプスの山岳景観は4県に跨る程の雄大な自然であり、本州の中でも多様な登山ルート・名峰があることからその風景と山頂を目指して来られる方も多いかと思います。(写真は薬師岳登頂途中に後ろを振り返った時の北ノ俣岳、黒部五郎、雲ノ平、三俣蓮華岳方面の景色です。)

そんな感動して息をのむような北アルプスの景色に至るために、長距離の登山道を歩くことは必須であり、その登山道が日々どのようにして維持されてきているのかご存じでしょうか。

近年、国立公園を始め日本各地で登山道維持や自然環境保全に関する様々な取組について情報発信がされており、施設の老朽化や予算、人不足等といった課題意識は登山道を歩かれる利用者を始めとして様々なご意見を現場に行くと私自身も直接伺います。

大自然のフィールドの維持ですので当たり前かもしれないですが、行く先々で山小屋や地域関係者の方々からお聞きする登山道維持の課題や長く取り組んでいる保全対策は共通していることもあれば、諸条件が異なる点もあります。今後もどのようにして登山体験をしてもらえるように維持を行うか、利用と保護の両立を実現するか等、課題は山積みだなと日々感じています。

「北アルプストレイルプログラムを始めます」というと「入山協力金導入」とどうしてもお金の話だけが目先に情報として出てしまっているのが現状で、どういった課題意識を持ち、日々の取組を現場側が取り組んでいるのか、何をどのように進めていけばよいのか等、利用者、関係者の多くの方に現状をより知ってもらえるようにするには、収集した情報の発信を行うことが必要だと感じ、実証試験期間ですが発信を進めることにしました。

上記で記載している「北アルプストレイルプログラム」という取組が、現在長野県(上高地等の南部エリア)を始めとして、岐阜県側、富山県側と取組が進められていますが、そもそもどういった経緯で始まったのか、具体的に何をしていくのか、について最初に記載できればと思います。

 

 

〇北アルプストレイルプログラムとは??

中部山岳国立公園内にある北アルプスの登山道を後世にも持続的に利用可能な状態で維持するために、利用者や地域関係者とともに登山道維持の取組に協力する仕組みを作るための取組です。具体的には、「登山道を利用できる状態を維持すること」、「周囲の自然環境への影響を最低限にして貴重な自然資源をできる限り自然のまま維持すること」が大きな目標になります。

この取組が始まったのは、長野県南部エリアで令和3年度からであり、契機となったのは、新型コロナウイルスの流行が大きいかと思われます。新型コロナウイルスの蔓延により、ホテルやその他サービス業を始め営業に打撃が入ったのは早くも数年前のことですが、登山の拠点施設となる山小屋もその影響は大きく、宿泊人数の減少や感染防止対策等、経営体制の変更を余儀なくされました。

南部地域の登山道の多くは国立公園の利用施設の管理者が不在の道として、関係機関や周辺の山小屋で構成される「北アルプス登山道等維持連絡協議会」によって山小屋を始めとする関係者によって実質的な登山道の維持活動が行われてきていました。地元基礎自治体等から補助金はありましたが、山小屋事業者自体が事業収益の一部を拠出している状況であったことから、コロナによる経営状況の変化は登山道維持にも影響が出ており、現状を理解してもらい、利用者からの協力金の導入や整備人材の育成等を目指して取組はスタートしました。

 

トレイルプログラムでは、山岳関係者が登山道維持に協力できる内容として、具体的に以下のような取組を提示しています。協力金が現時点では最も参加しやすい方法となっていますが、他の以下の内容も非常に重要です(何点か抜粋して取りあげます)。

 

・労力面で参加する

登山道整備ボランティアや講習会の参加です。登山道整備は私も現地作業を何度も参加していますが、当日、未経験でも登山経験が一定あればマンパワーが必要な作業もあり様々な面で役立てる機会があります。一方で現場を監督し、技術指導を行う整備士は経験とセンスがやはり必要で、こうした技術をもった人材にちゃんとした対価を払い持続的に関われる仕組みも各地で将来的な課題です。

 

・登山道の状況を報告する

街中の一般道等の道路とは異なり、標高が高い山の登山道は気象変化や災害等によって利用状況が大きく変化することがシーズンを通して頻繁に起こったり、変わらずであったりと変化が大きいことが特徴としてあります。利用者であっても、付近の山小屋へ崩落箇所や危険箇所の情報共有を頂けるとそれ以降に利用される方々への情報提供が新しい内容に更新され迅速な復旧や補修の検討にも役立つかと思います。

 

実際に、本プログラムの導入時に富山県側の地域関係者へのヒアリングや意見交換を重ねる中で出てきた主な課題は、「詳細な情報の把握を進めること」、「大規模工事には予算がつくが、日常的にこまめな手入れが必要な維持作業への予算が不足している」、「現場で指導できる技術者をしっかり増やしていくこと」・・等が出ており人・予算・情報を現状よりどのようにして改善していけるかをこのトレイルプログラムで皆さんと考えていくことになるのだろうなと感じています。

今回は、トレイルプログラムの内容や取組開始の簡単な背景等をとりあげましたが、今後においてもより詳細な内容や現地での取組、関係者からの情報等を更新していければと思いますのでご確認頂き、現状を知るきっかけとしてご活用ください!