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北アルプスで唯一海まで続く登山道~朝日岳から日本海親不知へ

こんにちは!北アルプス富山県側登山道等維持連絡協議会事務局の一ノ枝です。

 

前回、朝日岳(北の又小屋~朝日岳)のルートについて紹介をしました。(2024年8月初旬調査)

今回はその続きである朝日岳山頂から長栂山、黒岩山を経て日本海へ抜ける登山道をご紹介します。

 

北アルプスで唯一海に抜けることができる栂海新道

北アルプスの中でも特筆するべき山域と言えます。国立公園は中俣と黒岩山の分岐までになり、今回歩いた区間は黒岩山までですが、今回の記事では日本海までの栂海新道についても簡単に触れたいと思います。

 

朝日岳から主要な北アルプスの山岳景観(雪倉岳や白馬岳、立山劔方面も見えます)や富山湾、日本海を眺みながら、高度を徐々に下げて北へと進みます。吹上げのコル分岐までは地道で砂礫の道を進みます。この日は天候が良く、新潟方面の山も見え眺望が素晴らしかったです。

 

砂礫の地道を北へと進む

 

日本海を望みながら北へと進む

 

 

吹上げのコルは蓮華温泉と長栂山・親不知へ向かう分岐点です。看板もかなり劣化が進んでいました。

薄くて見えづらい看板

 

吹上げのコルから少し進むと木道があり、照ノ葉池付近では高床式の木道も現れます。

この周辺では、泥濘があることや植生保護の為に平成20年度頃に木道を中心とした整備が環境省の施設として設置されています。

 

照ノ葉池

 

吹上げのコルから先は地道と木道が点在する道です。木道は概ね劣化は少ないものの一部損傷が激しい箇所もありました。通行の際は注意してください。

 

損傷が著しい木道。雪などの大きな外圧によって破損したと考えられる

 

長栂山を過ぎてからの下部は設置してからかなり経過していると思われる鉄製の階段ハシゴもありました。この栂海新道を開通させた1970年代にさわがに山岳会による道の整備の際に設置されたものであることが推察されます。

 

鉄製の階段

 

浸食が激しい箇所

 

なぜ木道が崩落してしまったのか?崩落のメカニズム

アヤメ平から下部は登山道が川となり水による浸食が著しい箇所がありました。

この周辺も平成20年前後に整備として土留め工や植生保護の為の木道が設置されていますが、水流の影響により土壌浸食が大きくなっている箇所が出ています。

そしてその先に、木道の崩落箇所があります。今回の踏査のメインとなる場所です。

浸食が激しい箇所

 

木道の崩落箇所

 

昨年度末に木道が落ちかけていると朝日小屋から事前相談があり、確認した時はまだ一部浮いている状態だったものが年明けの事前点検時には写真のような状態で崩落していました。なぜ木道が崩落してしまったのかを考えていきます。写真では完全に木道が落ちてしまっていますが落ちる前は当然木道が敷かれており、その下には地面がありました。

崩落箇所

 

崩落箇所の上部にあたるアヤメ平先から水による浸食が大きな箇所がありました。はじまりは小さな浸食だったかもしれませんが、土留め対策を行うことができずに浸食が進んだ道は徐々に水によりその規模が大きくなっていきます。従来の地形の関係もありますが、木道が崩落した箇所の浸食の深さは高さで3m程度あり、10年近い時間経過による自然の変化の大きさには驚かされます。

上流部から水の勢いを加速させ流れてくる

 

大雨の時に浸食は一気に加速し、今回崩落した木道下部に水が流れ、浸食されていくことで小さなトンネルができ土砂が流失していきました。(小さな滝ができるイメージです)

浸食がはじまった時のイメージ

 

一度できた穴は土留め対策をとらないと大雨時に、さらに浸食が進み、土砂流失が加速します。登山道の維持を行う為の草刈り等は委託事業として環境省から地元団体に依頼し実施頂いている一方で朝日小屋から往復で1日かかるような遠方の箇所での浸食防止の土留め対策を行う為には作業人員も複数人必要ですし、現地で施行方法を考えて指示する役割も求められ、現状ではこういった対策を進めることが難しくなっており、人材確保と育成が必要だと感じます。

 

今回は当日同行した環境省職員の複数名で安全に通行できるように簡易補修を行い、迂回路をつくりました。崩落していた木道は設置されていた高さまで人力運搬で戻し、迂回路用に再度設置しました。通行の際は浸食箇所も考慮して通行してください。

 

ここまで大きな浸食となるといずれ迂回路まで浸食が進んでしまうことにもなりかねない為、次年度以降に道の再配置や土壌浸食の対策工事の為の調査・対策方針を決めていくこととなります。

簡易補修を実施

 

 

崩落箇所から先へ、黒岩山分岐まで進みます。看板も不鮮明かつ倒れて傾いているものも多く見受けられました。

埋もれてしまい、看板があるかもわかりにくい状況

 

中々標高が下がらない栂海新道は健脚向き。北アルプスから日本海へ

黒岩山から先の栂海新道は国立公園から外れます。今回は踏査していませんが簡単に触れたいと思います。

犬ケ岳や白鳥山など1600m~1200mの山々のアップダウンを何度も繰り返して日本海の親不知へとたどり着きます。途中栂海山荘と白鳥避難小屋がありますがエスケープルートもないためかなりの健脚向けのコースです。

栂海山荘

 

 

行程は長いですが3000m級の北アルプスから日本海へとたどりつく体験は他では味わえないものになるでしょう。

 

親不知。日本海へ続く最後の階段

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

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