立山連峰3000m級の稜線を縦走~室堂-五色ヶ原-薬師岳区間
こんにちは!北アルプス富山県側登山道等維持連絡協議会事務局の一ノ枝です。
立山連峰はどこからどこまで?
前回投稿した、剱岳(早月尾根)のクイズの投稿が好評だったので今回もクイズを出したいと思います!題して「北アルプス謎解きクイズ」です!
それでは今回の問題です!
「立山連峰」と呼ばれている山はどこからどこまでをいうでしょうか?
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わかりましたか?!立山連峰ってよく聞くけどどこのことを指すのかと言われると悩まれた方もいるのではないでしょうか。
正解は「僧ヶ岳から三俣蓮華岳」です。(思ってたより長い・・・)
ちなみに、雄山、大汝山、富士ノ折立を総称したのが「立山」と呼んでいます。
正解できた方もできなかった方も、おめでとうございます!また1つ北アルプス雑学が増えましたね!
さて今回はクイズのテーマにもなった立山連峰の「室堂~五色ヶ原~薬師岳」の縦走路について紹介します。
今回のコースは立山連峰の3000m級の主稜線を進むダイナミックかつ特筆した景観を楽しむことができるエリアです。そのほとんどの区間が国立公園において最も原生的で貴重な自然が残る「特別保護地区」に指定されています。
国立公園の特別保護地区とは一番希少な自然で守るべきエリア
「特別保護地区、、、いきなり聞き慣れない言葉がでてきたなあ」
と思われたかもしれません。ここで簡単に国立公園が存在する根底である「自然公園法」について触れたいと思います。
自然公園法の目的は
第1条「この法律は、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする。」(自然公園法第1条より引用)
とあります。
また国立公園を「我が国を代表するに足りる傑出した自然の風景地」としています。
「なんか全体的に言葉が難しいですよね、、、」
ものすごくかみ砕いて言い換えると「日本の中でも特に貴重な自然が残っている場所」です。
壮大な海や北アルプスのような山岳地、釧路の湿原等・・大自然を将来世代にまで引継ぐために守るとともに、公園として利用してもらい学びや感動を得てもらう為に国立公園は存在します。
国立公園内では5つのゾーンに分けられて自然を保護するための規制をかけています。その5つが「特別保護地区、第1種特別地域、第2種特別地域、第3種特別地域、普通地域」です。特別保護地区は国立公園の中でも一番規制が強く守らなければいけないエリアということになります。
これから進む立山連峰の自然の重要性と魅力が少しでも伝われば嬉しいです。
さて登山口は室堂平から出発です。
室堂平から五色ヶ原までの登山道状況
室堂平を出発し室堂山・浄土山方面へ進みます。
室堂山分岐までは石畳の道になります。
この周辺は、観光拠点でもある室堂平と近く、一般の利用者も一部はハイキングで利用されることから周辺植生の保全のために整備されました。
進む道中で道標が現れます。ここ数年で立山町により新設されたものです。
悪天時の道迷い等の遭難防止を目的として利用者の要望があり整備頂いたものです。
立山一帯は豪雪地帯のため雪の重みで傾きかけており、こうした施設も定期的に更新が必要です。
浄土山までの登りを超えると本格的な縦走登山ルートが始まります。
龍王岳分岐を五色ヶ原を目指して進みます。
最初は岩稜帯の道が続きます。
五色ヶ原に向かう途中に鬼岳の東面をトラバースで進む場所があります。こちらは雪渓が残りやすい場所のためシーズンはじめの夏道が出るまでは雪渓を切る必要があります。この作業は五色ヶ原山荘のスタッフの方が担っています。雪渓は日々雪溶けが進行するため毎年適時メンテナンスをする必要があります。小屋から歩いて数時間かかる場所なので作業に来るだけでも負担が大きいところです。
道中に一部木道が整備されており、設置から年数が経過しており老朽化と木道自体が斜めになっているところがあります。今後更新することも視野に入れますが当面の通行に留意ください。
植生限界を超えているため、土砂、岩場を進む箇所が多くなります。
傾斜も急であるため、転倒に注意しながら進むことを推奨します。
特に急峻な箇所には鎖場やハシゴが出てきます。
五色ヶ原に近づいてくると木道が多くなっていきます。
過去の火山活動もあり、溶岩台地で全体的に平らな地形をしており、高山植物が豊富であり自然の池塘も確認される原生的な自然が残っています。
植生の踏み荒らしや登山道が複線になることを防止するために木道が設けられています。
五色ヶ原周辺の木道は、環境省と富山県が木道整備工事を、平成20年頃と30年頃に入れており設置してから10年経たない箇所も多いこともあり比較的新しい木道が多い印象した。
植物も木道脇まで生育しており、整備の目的を果たしている箇所が見られるのも新たに整備してから数年以上かかるのが登山道の一つの特徴だと思います。
土留めを入れている一部に侵食が見られました。
過去に整備した箇所から二次的に発生しており、小規模ですが浸食が進む前に修繕が必要です。
木道を進むと五色ヶ原山荘に到着です。
五色ヶ原はお花畑をイメージされる方も多いと思います。ですが近年笹の繁生が進んできており、お花畑にも侵入することで植生の変化が懸念されます。
五色ヶ原から薬師岳までの登山道状況
五色ヶ原を過ぎ、さらに奥へと続く越中沢岳、スゴ乗越小屋を目指します。
これより奥は、稜線や森林内と標高が上下し通行に必要最小限のロープやマーキングによる維持がなされており、複数日かけて縦走登山を行う上級者向けのルートとなります。
登山道調査を意識しながら歩いているとついつい下を見ながら進みがちになってしまいますがふと見上げると素晴らしいパノラマに魅了されます。進んでいき越中沢岳に到着です。
看板の表記が消えており、補修で上書き表示されています。これは国有林野として保護管理(ロープの設置や清掃活動等)を行うグリーンパトロールのスタッフが巡視をしている際に記載をいただけたようです。
山頂からは大きな薬師岳の山容が見えてきました。
越中沢岳からのスゴ乗越までは特に急峻になっており、途中ハシゴやロープなどが設置されており、慎重に下りていきます。
スゴ乗越小屋に近づくにつれて、過去に整備された木道の形跡が確認できました。
この区間は管理者不在道であるので、スゴ乗越の小屋の方が日常維持の範囲で整備頂いたものになります。
スゴ乗越小屋に到着です。
スゴ乗越小屋は縦走路の中でも一番遠い場所にあたります。スタッフの方にお伺いすると、「スタッフの人員も限られており、シーズンがはじまり、閑散期の時に登山道整備を行っている。運べる資材も限られているので、必要最低限の資材での整備を行っている。」
とのことでした。
地道が多い中で利用による大きな浸食や影響が全体的には出ていないですが、小規模な修繕や維持活動は求められる為、現場のマンパワーの実情を含めると維持を行っている方への感謝の気持ちを感じます。
次に薬師岳を目指して進んで行きます。
道中は地道が続き、部分的に浸食が進んでいる箇所や複線化が確認されました。
北薬師岳に向かって標高を上げていくと岩場、ガレ場が多くなってきます。
適宜マーキングはされていますが、天候が不良な場合は道迷いも懸念されるので通行の際は留意してもらえればと思います。
そして薬師岳に到着です。
薬師岳の祠は50年ほど経っており老朽化していました。そのため昨年に薬師堂再建協議会がクラウドファンディングによって新しく建て替えられました。
令和6年からは薬師如来像に加え月光菩薩像と日光菩薩像が祀られており、多くの登山者の安全登山を見守っています。
薬師岳からは下り基調で太郎平を経て折立へと下山しました。その区間は次回以降の回で触れたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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