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雲ノ平トレイルクラブの活動に参加してきました!

こんにちは!北アルプス富山県側登山道等維持連絡協議会事務局の武田です。
少し前になりますが、2024年9月3日~4日の間、一般社団法人雲ノ平トレイルクラブの活動に参加してきましたので、今回はその活動内容を紹介いたします。
雲ノ平トレイルクラブは、中部山岳でも中央部の最奥部にある雲ノ平周辺の登山道の維持管理を通じた自然環境保全を目的として2021年に設立された団体です。メンバーは雲ノ平山荘の伊藤氏を中心として、公園外で普段は仕事をされている設計士の方や大工、林業関係者や教育、IT、アウトドアメーカー等多種多様な職業に就く方々で構成されています。

雲ノ平山荘

今年の活動参加者は約20人でした。
最奥部の雲ノ平では原生的な自然が残っている一方で、多くの登山者が入域することが起因となり登山道の複線化、植生の踏み荒らしによる荒廃等、自然環境への影響と景観の変化が生じています。

さらに近年は、異常気象による豪雨が影響した登山道周辺の土壌浸食の加速や、コロナ禍等の影響から山小屋の経営環境の不安定化も進行し、従来のあり方では対応しきれなくなっているため、新たな協力体制の確立を模索しこのような活動を進めている背景があります。まずは雲ノ平周辺の地形や地質、植生等の状況について伊藤氏から説明がありました。
植生を復元するには、土壌の歴史を学ぶことから始まります。植生が後退するには様々な原因や理由がありますが、利用による影響を最小限にするために適切な管理を施す必要があります。

 

数年前の写真と比較しながら説明されていますが、現在の植生が後退している状況がよくわかります。

 

このような植生が後退している箇所に黄麻やヤシを素材とした緑化ネット「土留めロール」を使用して、植生の発芽を促す取組を継続されています。2008年から林野庁及び東京農業大学の協力もあり登山道沿いの土壌侵食箇所に植生ネットの設置を行う取組をどのように環境が変化するのかをモニタリング調査も実施することで10年以上取組を行われているとのことでした。


 

過去の取組みにおいて施した土留めロールの設置箇所は、少しずつ植生が復元されています。

標高が高くなると植物の回復速度も標高が低いエリアと比べると年月がかかり、一度荒廃が進むと徐々に規模も大きくなることも多く、地道な取組を行うことの重要性を参加者もまずは学びます。

 

土砂流出を防止するための土木的な考えではなく自然を保全しながら良い風景を残す造園的な発想で植生が後退した場所に岩を置き、人の通行を止めると植生が回復した事例の説明がありました。利用環境をコントロールすることで将来的に雲ノ平周辺の草原地帯の風景が戻ることが望まれます。

 

雲ノ平山荘から約1時間歩き、祖父岳の登山道にやってきました。
このあたりは地形の構成上、ガレ場が多く、足元が不安定で登山者が転倒しやすい場所です。
今回は近自然工法による考え方に基づいた登山道の修復技法を学びながら、周囲の石材を組み登山者が安全に歩行できるように施行しました。

ここの場所では杭等を用いず自然の作用を利用して固定されるように、施行場所に応じて完成形をイメージしていきます。私も作業に参加しましたが一番大変なのは、場所に適合する形や大きさの石を見つけることと、その石を運搬することです。危険が伴う作業で周囲のメンバーとコミュニケーションを取りながら進めることが大事でした。作業を行う人数が多いと石の運搬や階段組を行う等、分業も一定できるので効率的に実施できます。

 

土台となる石は大きくて重いほど安定します。一番下から石を積み上げていき、人の踏圧によりさらに強固なものとなるように、大石と小石をバランスよく使って高さを調整し、足の運びも考えて石を配置していきます。一般的な土木工事の場合、木材や石材をおおよそ指定した規模や量を指定された位置に置くことが作業の中心となりますが、今回のような現場に合わせて柔軟に対応が求められるのが自然環境保全の難しさでもあると感じました。

 

 

ガレ場だった場所が、周囲の自然と調和した歩きやすい道になりました。

 

 

 

近自然工法は、自然の力学を理解し、周辺の資材を利用しながら自然環境の成り立ちを考えて施工する工法のため、時間も労力も必要としますが、人工物を使用せず、極めて自然状態に近い形で修復することができ、同時に自然環境の保護にも寄与します。
このようなボランティアプログラムへの参加の機会は定期的に雲ノ平トレイルクラブHPから公募されているので機会がありましたら是非積極的に参加して学んで頂ければ嬉しいです。

 

 

▲▲▲北アルプストレイルプログラムとは▲▲▲

 

中部山岳国立公園を訪れる登山者が安全に楽しむためには、登山道の維持が欠かせません。しかし、行政や山小屋を中心とする地域関係者だけで登山道等を維持し続けて行く仕組みは限界にきています。実際に登山道を利用する登山者にも協力いただき、登山道等の維持に「参加」できるのが北アルプストレイルプログラムです。私たちと一緒に登山道を未来に繋ぎませんか。

 

➤ 費用面で参加する(協力金)

 

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