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北アルプスの登山道を次の世代へ~北アルプストレイルプログラム事業報告会&ワークショップレポート(後編)

令和8年2月23日、富山市にて「北アルプストレイルプログラム事業報告会&ワークショップ」が開催されました。本会では、令和7年度に協力金を活用し富山県側で実施された6つの団体の取り組みを共有するとともに、持続可能な登山道を次の世代へ引き継いでいくために私たちができること。について意見交換が行われました。今回は前回の事業報告会の前半に続き後半の3団体の発表について書いていきます。

 

4.薬師トレイルクラブ:福山寛大氏

 

今回発表いただいたのは薬師トレイルクラブ代表の福山寛大さんです。

薬師トレイルクラブは令和7年2月に設立された新しい団体で、自然と調和し、北アルプスの原生的な自然風景の一部となるような登山道を整備することで持続可能な形で維持管理を目指しています。主な活動フィールドは薬師岳、太郎山、黒部五郎岳、雲ノ平などの奥黒部に繋ぐ折立を中心にしています。

 

<薬師トレイルクラブ発表資料より>

 

登山道整備には近自然工法という考えを取り入れた整備を進めています。周辺の資材(木枝、石、葉、土砂)を最大限活用した木組みによる整備やヤシノミ土嚢を使用した自然により馴染むかたちの整備を実施してきました。

 

<薬師トレイルクラブ発表資料より>

 

また、モニターツアーを通じて登山者に現状を知ってもらい、利用者自身が関わる仕組みづくりも行いました。

 

<薬師トレイルクラブ発表資料より>

 

また中部山岳国立公園内で先行的に取り組まれている三俣山荘や雲ノ平トレイルクラブの登山道整備活動へも参加し、知見、技術の向上に取り組みました。

 

<薬師トレイルクラブ発表資料より>

 

立ちあがって間もない薬師トレイルクラブだからこそ登山道の変化に柔軟に対応できるように次年度の活動も継続的にボランティアを募り整備を実施していくと表明されていました。

 

5.一般社団法人雲ノ平トレイルクラブ:伊藤二朗氏

今回の発表は雲ノ平山荘の主人でもある伊藤二朗さんです。雲ノ平トレイルクラブは、「自然景観、生態系の営みに調和するビジョンの醸成」、「自然環境をめぐる創造的な文化の形成」を目的として2022年に設立された団体です。

日本の国立公園の構造的な問題や登山道問題に関して説明いただきました。

<雲ノ平トレイルクラブ発表資料より>

 

 

山岳環境での公共工事の在り方、事例なども写真を交えて発表しています。

<雲ノ平トレイルクラブ発表資料より>

 

また、国立公園での自然体験の美しさとは何かを見直す必要性も話されておりました。

<雲ノ平トレイルクラブ発表資料より>

 

これからの登山道整備には、見る目を養い、生態系や景観、歩きやすさなど複合的に捉えられる感性が大切です。

<雲ノ平トレイルクラブ発表資料より>

 

雲ノ平山荘では2007年から東京農業大学や行政機関と連携して植生復元活動を実施しており、20年かけて蓄積してきた結果が現在成果として出始めています。

<雲ノ平トレイルクラブ発表資料より>

 

<雲ノ平トレイルクラブ発表資料より>

 

 

令和7年度は祖父岳山麓登山道の植生復元をボランティアと協働で実施しました。

<雲ノ平トレイルクラブ発表資料より>

 

 

協力金事業とは別に、祖父岳登山道の石積みによる施工や木道の付け替えといった多岐にわたる整備にも取り組んでいます。

 

 

<雲ノ平トレイルクラブ発表資料より>

 

 

 

6.三俣山荘:石川吉典氏

 

今回の発表者は三俣山荘の石川吉典さんです。三俣山荘は、黒部源流の三俣蓮華岳と鷲羽岳の標高2,550mの鞍部に位置する山小屋です。どの登山口からも離れており、北アルプス最奥部と言っても過言ではない場所にあります。近年三俣山荘では、登山道の道直しをボランティアと協働で実施しており、今年度は100名を超える参加者と一緒に道直しを実施しました。

<三俣山荘発表資料より>

 

その中の1つの取組として今回の協力金を活用し登山道メンテナンス人材育成プログラムを実施しました。実地研修とオンラインワークショップを組み合わせ今回行われ、将来奥黒部エリアの登山道を守る担い手が育つことを目指した取り組みになります。

 

<三俣山荘発表資料より>

 

 

本プログラムの整備では奥黒部源流域の崩れた登山道での石組みの取組みを紹介いただきました。

<before~三俣山荘発表資料より>

 

 

<after~三俣山荘発表資料より>

 

 

 

<三俣山荘発表資料より>

 

 

三俣山荘独自の取組として登山道維持や植生復元への活用を目的として、宿泊者の方へ協力クーポンを発行している取組についても紹介されました。

<三俣山荘発表資料より>

 

三俣山荘では楽しみながら守るという考え方が、多くの参加者の共感を生んでいるのかもしれません。

 

協力金を活用した持続可能な登山道に向けて

今回の報告会では、協力金を活用した6つの事業と各組織の取組が紹介されました。登山道の維持管理が多くの人の努力によって支えられていること、そして利用者もその一員として関わることで持続可能な登山道につながっていく可能性が共有されました。北アルプスの豊かな自然と登山文化を未来へつないでいくためには、現場で活動する人々の取組を知り、支え、広げていくことが欠かせません。これからも多くの人の参加によって、持続可能な登山道の仕組みが育っていくことを目指して取り組んでいきます。