感動を体験できる登山道とは?折立から薬師岳への登山道状況(その2)
こんにちは!北アルプス富山県側登山道等維持連絡協議会事務局の中森と一ノ枝です。
今回は北アルプスの貴婦人とも称される薬師岳へと続く道のご紹介(その2)です。前回は折立から太郎平小屋までを紹介したので今回は太郎平から薬師岳へと歩みを進めます。
太郎平から薬師岳へ向かう稜線帯を進む
太郎平に到着する少し手前から特別保護地区に入り、薬師岳へと続く稜線はすべて特別保護地区となっています。特別保護地区は「特別地域内で特に厳重に景観の維持を図る必要のある地区」になっており国立公園の骨格をなす場所になります。

<折立~薬師岳の地種区分。オレンジ色内が特別保護地区>

<水晶岳、ワリモ岳、鷲羽岳、雲ノ平の眺望>

<薬師岳方面へ道標>
木道を抜けると薬師峠(太郎平)キャンプ場に到着します。

<薬師峠(太郎平)キャンプ場>
岩の地道で水が流れている箇所があります。ここからはこのような道の登りが基本となります。最初は沢沿いの道なので夏でも涼しいところがあります。

<水が流れている道>

<小さな徒渉。大雨の時は注意が必要>
薬師平の木道がでてきました。岩を利用したステップ段差になっています。
薬師平からは、奥黒部の山々(北ノ俣岳や黒部五郎岳、水晶岳の方面)を見渡すことができこの辺りから眺望が良くなってきます。

<薬師平の木道>

<看板の損傷が激しい>
薬師岳に近づくにつれて標高も上がってきて美しい地道のトレイルを歩いて行きます。これぞ北アルプスでの山岳景観の醍醐味というような道を進みます。

<高山帯の美しい稜線のトレイル>
折立~太郎平までも浸食はいかないですが、こちらでも一部土壌の流失が確認できました。

<土壌流失による植生の後退>
高山帯になるほど、自然環境は厳しくなり、植生の復元速度も遅くなっていきます。一方で登山による踏圧や水による浸食などによる荒廃は一瞬です。
ガラガラになっている道が続きますが、岩の要所にマーキングを山小屋により実施頂いているので人が歩いている区間は分かるかと思います。

<道標>
薬師岳山荘から山頂までの登山道状況
しばらく登っていくと薬師岳に最も近い薬師岳山荘に到着です。

<薬師岳山荘>
ここから土砂、岩石の地道を進んでいきます。ルート上は石が除去されておりわかりやすく道が整備されています。山荘から少し上の区間は蛇行して登っていくことからひどく浸食することが生じていない道です。石を踏むと崩れることもあるので歩道上を歩いていくことに注意しながら歩くと良いです。

<土砂、岩石の地道>

<振り返った風景。奥には薬師岳山荘>
地形図上の避難小屋に到着です。

<避難小屋>
避難小屋は場所によってそれぞれだと思いますが、薬師岳のこちらは雨風を多少しのげる、緊急避難シェルターといったところでしょうか(天井は開いているので上から雨の影響を受けます)いずれにしてもしっかり休める場所ではありません。
薬師岳周辺にて約60年前に山岳部の学生が十数名で積雪登山中に遭難事故に発展したことが過去にありました。こうした経緯からも地元地域関係者で構成する山岳遭難対策を検討し現在の救助体制の構築にも繋がっています。
薬師岳には東斜面に大規模な氷河地形の薬師岳圏谷群(カール)があり、国の特別天然記念物に指定されています。
登山道上からはこのカール地形を上から見下ろすことができ、特有の地形を見ることができます。

<薬師岳の圏谷(カール)>
土石の地道を進んで行くと薬師岳山頂に到着です。

<薬師岳山頂はすぐそこ>

<薬師岳山頂の看板>

<薬師如来像がまつられている祠>
薬師岳の祠には、薬師如来像がまつられており、毎年登山者の安全を祈願して開山祭に下から歩荷で持ち上げ、閉山祭で下ろすことを毎年実施されています。
祠はクラウドファンディングにより昨年度新たに改修されました。登頂された際には是非山の景色と合わせてご覧頂ければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
▲▲▲北アルプストレイルプログラムとは▲▲▲
中部山岳国立公園を訪れる登山者が安全に楽しむためには、登山道の維持が欠かせません。しかし、行政や山小屋を中心とする地域関係者だけで登山道等を維持し続けて行く仕組みは限界にきています。実際に登山道を利用する登山者にも協力いただき、登山道等の維持に「参加」できるのが北アルプストレイルプログラムです。私たちと一緒に登山道を未来に繋ぎませんか。
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参加方法:下記HPより事前申込制となりますので下記サイトにてお申し込みをお願いします。
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◎本シンポジウムの内容
今回のシンポジウムでは、登山道に焦点を当て、北アルプスの登山道の持続的な維持のために必要な整備を行う人材の確保・育成や財源の確保といった目先で困っていることから、どういった登山道が望ましいのかという計画に関わる内容まで、地元山小屋、ガイド、民間団体といった関係者と登山道維持の課題に取組む他地域の研究者や企業、団体と事例を共有し、北アルプスの登山道を後世に繋ぐためにこれからやっていくことを考えるきっかけになることを目指しています。
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